平成20年度伊川津貝塚調査の概要

伊川津貝塚の概要

貝塚は伊川津集落の中にあり、神明社境内を中心として、南北60m東西180mに広がる、縄文時代後期末から晩期の東海地方屈指の大貝塚である。明治36年(1903)から、発掘調査が行われ有名な考古学者、人類学者が伊川津の地を訪れた。伊川津貝塚で有名なものは1904年に発見された「有髯土偶」で、「ヒゲ(髯)」のある土偶として、当時の人種論争に活躍したもので、叉状研歯がほどこされた頭骨も有名ある。明治時代より学会に話題を提供し、吉胡貝塚と同様に、多くの埋葬された縄文人骨が見つかっており、叉状研歯頭骨をはじめ縄文時代の独特のイメージを植え付けた重要な貝塚である。

特に残りの良い神明社境内東側の一部は県指定史跡(昭和49年10月9日指定)となっている。

調査の経緯

農業集落排水泉北部地区(その1)工事に伴い、下水道管敷設に伴い工事で壊される遺跡の範囲(面積151㎡管路+マンホール部分)で調査を行った。場所は伊川津漁協の北、西の道路及び約80m離れた集合マンホールである。
期間は12月1日から3月27日にかけて行っている。調査は平成21年度以降も予定されている。

成果の概要

調査は、すでに発掘が行われた場所、また地下埋設物でかく乱されている場所もあった。貝層は漁協の西、北の調査区で残存していた。いずれも後期末から晩期前葉までの貝層である。漁協西側の南は過去の調査でかく乱されている。また、漁協北側の西半分も過去の調査で一分かく乱されていた。その他の貝層が残存部分は道路で上面は削られているものの道路下の保存状態は極めて良好であった。調査区の東側は、すなわち貝層の末端には、後期末の貝層の上に比較的新しい貝層が堆積していた。その他の場所についても当初は新しい貝層が堆積しており、宅地や道路の造成によって削られ、伊川津の集落内の低い土地に移動したものと考えられる。例えば、8号マンホールの南の水田の道路は、盛土が貝層であった。また6号マンホール付近の道路の低みの埋め土も縄文期の貝層であった。

貝層は発掘残土および、過去の調査の埋め戻し土も含めすべて4ミリのフルイがけを行い、遺物採取のエラーを補った。主要な貝層ではコラムサンプルを採取した。
主体となる貝は、アサリ、オニアサリ、スガイである。スガイの純貝層もあり、古い貝層では、ハマグリが混ざる。他に、レイシ、イボニシ、アカニシ、ダンベイキサゴ、ツメタガイ、ウミニナ、イタボガキ、マガキ、オオノガイ、シオフキ、ミルクイ、ウチムラサキ、マテガイ

動物骨の同定はしていないが、シカ、イノシシを主体としている。イルカ、クジラなどの海獣類もある。魚骨は、スズキ、タイ、フグは確認できている。小魚も当然あると思われるが、まだ未整理なので確認にいたっていない。

遺構

本的には土壌をほとんど含まない純貝層、わずかに混じる混土貝層、基盤に近い混貝土層、基盤の砂礫との漸移基的な層に分けられる。

人骨の埋葬墓坑中世以降の人骨は大きく深い穴であった。縄文人骨は、基盤の砂礫層に穿たれたもの、貝層に掘り込まれたものが存在した。

埋葬イヌ墓坑基盤にまで掘り込まれた土坑を有するもの、貝層の不整合面にパックされるように埋葬されるイヌも存在した。その場合保存状態が悪く、取り上げもままならない状態である。

大型の礫を組んだ炉の跡を1基確認した。大半が調査区外であったので大きさは不明である。内部は赤化変色著しく灰も詰っていた。

貝層面にはところどころ焼けた場所が見られた。

基盤層にはピット、土坑が確認されたが不明である。

主な出土品

・縄文時代晩期初の埋葬人骨1体、縄文時代の晩期前葉の貝層に掘り込まれた埋葬人骨2体埋葬犬11体、中世以降に埋葬された人骨1体
・縄文時代土器、石器(石鏃、石斧、石皿、砥石)、土偶、骨角器(ヤス、根バサミ、貝刃、貝輪、弓筈状製品、角製加工品、舌状貝器)、動物遺体(貝、獣・魚骨)がコンテナ70箱。

土器は縄文時代後期末から晩期中葉のものが多く見られた。西日本系の橿原文様、大洞・安行系の土器も少なからず見つかっている。主に伊川津Ⅰから稲荷山式の範疇に含まれるが、主体は伊川津Ⅰ~吉胡BⅠ式である。

石鏃が多く見つかったが、剥片類は少ない。貝輪も多く見つかった。主にサトウガイ製で、よけ研磨された小型のものが多い。ベンケイガイも多く見つかったが、素材となる貝、未製品は数点確認されただけである。イタボガキ、オオツタノハも見つかった。貝輪については、これまでの発掘区の傾向とまったく異なっている。

骨角器はヤス、根バサミが多いが、舌状貝器の圧倒的な量が特筆される。


0区調査前:南から

0区南半分:北から

0区埋葬:イヌ

A区西:北から

B区表土はぎ:東から

B区調査状況:北から

B区南壁:貝塚推積状況

B区:土器棺

B区:浮線文浅鉢土器出土状況

B区:散乱人骨

B区:埋葬人骨

B区:埋葬人骨

B区:火葬墓

C区:古代貝層推積状況

D区:土器棺(馬見塚式)

D区:オオツタノハ貝輪


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